手掴みで

回顧録

小学生の頃、捕まえたことがある手掴みで。

近くの小さい公園。いつも通るところだが、何やらうごめくものを発見。凝らして見てみると、猫?イタチ?うさぎ?しばらく様子をうかがう。それはペットショップや図鑑で見た。シマリス。

 こんなやつ。

にわかに狩猟本能が湧き立ったのはいいが、捕獲する武器がない。ポケットを探るとたまたまクラッカーが入っていた。一片をそいつに投げる。すぐに喰らいついた。「いけるかも」と少年の浅はかな思考が前へと推し進める。少しづつクラッカーを撒いて近くにおびき寄せる作戦。ほんとうに少しづつ少しづつ少しづつクラッカーを撒いていく。リスは思った以上に警戒心がなくだんだんと近づいてくる。そして、射程圏内に入った時。私は着ていた上着を脱ぎ去り、投網のようにリスめがけて放った。私はその上着にダイブして抑えこみ捕獲。「やったぜー」小さな雄叫びは通行人の気を引かない程度に収まっていた。

早速持ち帰り、以前ハムスターを飼っていたケージにイン。やつはもちろん初めての環境にとまどっている様子であったが、もともと人に飼われていたやろうから順応性は高かった。

三日後、ケージの掃除の為、下のトレイを抜いて洗った。そしてそれを戻すのを忘れていた。翌朝それに気づき、ケージに行くとやつの姿はなかった。あちこち探したが結局見つからなかった。悔やんでも悔やみきれない事態に少年の私は涙した。やつはまたどこかで誰かに捕まって飼われれていたのだろうか。

通り道に変電所があり、2重にフェンスが建てられていた。いつものように歩いているとカラフルな鳥がそのフェンスにとまっている。そこによく雀が数羽とまっているが、カラフルなのは初めて見る。「インコや」またにわかに狩猟本能が沸々と沸いてくる。だが、私には捕獲する武器がない。そこで浅はかな思考の少年は考えた。「坊さんが屁をこいた作戦や」と。要は牛歩戦術よりもはるかに遅くじわりじわりと近づくのである。自分を殺し、何かの建造物のように固まりながら進む。子供からしたら気の遠くなるような作戦であった。どのくらい時間が経ったのかわからなかったが、幸運にもそのインコは飽きることなくそのフェンスにとどまり続けてくれた。「今や」と心で叫び、両手を外側から包み込むようにインコを掴む。成功。特に暴れることもなく、やはりこいつも人に飼われていたのだろう。持ち帰りケージに入れる。手乗りインコに育て上げる目標を掲げ、しつけること1ヶ月。

いつものようにケージを掃除し、インコを入れて、眠りにつく。翌朝、やつが居ないことに気づく。入口が開いていた。閉めが甘かったのだ。やつは旅立っていった。やつはまたどこかで誰かに捕まって飼われれていたのだろうか。

何やってたんだろ、俺。。。。

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