りんごちゃん

回顧録

「ほんとに些細な事だから言いたくないの」

と涙ながらに訴えている。

付き合っているわけでもないが、ほぼそれに近い感じでいつも一緒にいた。その子は2歳下の青森出身で同じクラスだった。小柄で純朴を絵にかいたような見た目。おまけにほっぺがうすら赤い「いわゆるりんごほっぺ」なお顔。まわりからは「青森Y子」と呼ばれていたのも頷ける。

アメリカの大学なので日本のような先輩後輩はなく同じように接していたけど、向こうは先輩というか、兄のように思っていたのかもしれない。同じクラスに彼女には大親友がおり、その子と大喧嘩をして私になきながら訴えていた。理由はホントにほんとに些細な事、「光genji」で誰がいいかってので意見の対立があったのがきっかけで関係がこじれていったらしい。私からしたら何ともつまらない理由なのだが、当人にとっては深刻事態。早速仲裁に乗りだし、収束をお手伝いした。

そんなまだまだあどけない18歳の彼女から郷土青森の話を聞くのが好きだった。彼女の実家はほんとにりんご農園をやっていて、収穫のときはお手伝いをしてることなんか聞くと、ごちゃごちゃしている大阪出身の私からしたらとても牧歌的なほんわかした気持ちになったのも今でも覚えている。

結局彼女とは付き合うことはなかった。理由はいくつかあるが、私の気持ちがうまく伝わらなかったようだ。

そうした数か月を過ごしたある日、彼女は家の都合で青森へ帰ることになった。青天の霹靂のような衝撃だったが、私は彼女を見送った。季節は冬だった。きっと青森はここシアトルよりも寒いんやろうなぁって思いながら。

あれから30年以上経った。りんごちゃんどうしているかなぁ?

 

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